若年性遺伝子とは?

こどもや若い人は、大人に比べて、体が大きく成長したり、物覚えがよかったり、ケガの治りが早かったりします。私たちは、このような子どもに特有の強みを、「若年特性」と呼んでいます (図1左)。

若年特性は、小児期の難病の治療に役立てられると考えています。

若年特性は、年齢とともに変化して、例えば、大人になると身長の伸びは止まります。

こどもや若い時期には、大人にはない若年特性を成り立たせる「しくみ」があると考えられます。

科学の技術の進歩はめざましく、毎日のように新しい技術が登場し、今まで見えなかったものが見えるようになっています。その技術の1つが「高速シーケンサー」です。高速シーケンサーは、遺伝子がならぶゲノムDNAや、遺伝子のはたらきの担い手であるメッセンジャーRNAを全て解読することができます。

今回の研究では、若い生き物 (今回の対象はマウスです) が大人とどう違うのかを調べるために、高速シーケンサーを使い、メッセンジャーRNAの解読をしました。

その結果、若いマウスでは、大人では働いていない多くの遺伝子が働いていることがわかりました。

そのような、若い時期の細胞で機能している遺伝子を、私たちは、「若年性遺伝子」と名付けました (図1)。英語では、juvenility-associated genes, JAGs (ジャグ) と呼んでいます (Jam et al, Scientific Reports, 2018)。

今回、報告した論文では、通常の遺伝子とは違って、蛋白質をコードしていないロング・ノンコーディングRNA (long noncoding RNA, lncRNA) に着目しました。私たちは、このような、若い時期にはたらいているロング・ノンコーディングRNAにも名前を付け、「若年性リンクRNA」と呼んでいます (図1右)。英語では、juvenility-associated lncRNA, 略してJALNC, 「ジャリンク」と呼んでいます (Tano et al, Journal of Cell Science, 2019)。

ジャリンクの1つである「Gm14230」は、機能を抑制すると、細胞が老化することがわかりました。このことから、Gm14230の役割は、若い細胞が老化してしまわないようにすることではないかと考えました (図2)。

このことから、若い細胞の特徴の1つは、老化を食い止めるはたらきがあることではないかと考えています (図3)。

私たちの研究グループは、小児の難病の治療法開発をめざしています。

今回の論文で報告したGm14230は、小児がんの細胞でもはたらいており、Gm14230の機能を抑制することが、治療につながる可能性を示唆します。このような分子の機能を標的とするような治療法の開発を今後も進めて参ります。

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